11月17日夜、結構な勢いで雨が降った。町のほうではなにやら聞きなれない放送なっていた、いつものモスクから聞こえるお祈りの呼びかけではないようだったが、気にしないでビールを1本飲んですぐに寝てしまった。


 朝いつものように宿舎を出て事務所へ向かった。途中のイフティン地区で、普段は砂川になっている場所がその日は昨日の雨の影響で濁流となっていた、水の中に車を乗り入れるのをためらったがこの場所を通らないと事務所へはいけないため、流れの深さを確かめながら恐る恐る通過した。


 事務所について見ると、タナ川の川幅が広がりミコノ事務所の先50メートルほどの所まで川が迫っていた。

スタッフのジュマの話によると、ガリッサの町は大変なことになっているという。

どうやら昨夜の放送は避難勧告だったようだ。とりあえず二人で町の様子を見に行くことにした。


 川に近い地域は完全に水に浸っており人力車やロバ車で家財道具を運び出す人々の姿がたくさん見られた。


 また橋を渡って川の対岸のモロロ地域は川のすぐそばで土地も低く、ほとんどの人が家財道具を道路際に運び出していた。

いったん事務所に戻り、私とスタッフのワルサメ、ジュマの3人で話し合いをした。
 
 これは洪水災害で、
NGOミコノとして何もしないで見ているわけにはいかない。しかしその時ちょうど所長の土方さんは日本に一時帰国をしており、私一人と現地スタッフしかおらず、事務所の財政状態も先月の給料日にスタッフの給料を払いきれず、飼っていたヤギと羊を売って給料を払ったほど貧窮しているときだった。


 私は銀行の残高を考え行動を起こすことをためらったが、町の様子と必死で家財道具を運び出す人々の姿を思った。


 「いまここで何もしなければミコノがこの場所にいる意味がない、後のことは考えずとにかく動こう。」


 私にとって初めての経験であったが、スタッフのワルサメとジュマは9年前に洪水を経験している。彼らの言うには今夜にでもまた雨が降れば大変なことになる、とにかく急いでモロロ地区の人々を避難所になっているマドゴ地区に移動させなければいけない、今一番大事なのは人と家財道具の避難だ。


 車や多少のお金を持っている人はトラックで荷物を運び出し、荷車やロバ車を持っている人はそれらに荷物を満載して逃げるようにモロロ地区を離れていったが、それらを持たない大多数の人々は道端にすべての家財道具を積み上げ途方にくれるだけだった。


 幸いにもミコノには相当年季が入っているが大型トラックがある、しかしこの古いトラックを動かすための燃料はけして安くはない。わずか1万円相当のケニアシリングをもちスタッフのジュマ、ミコノガレージの生徒たちと共になじみのスタンドで給油をしてからモロロ地区へ向かった。


 モロロの道端に積み上げられている家財道具の横にトラックをつけあおりを切ると、まだ何も言わないうちから、次々に荷物が積み込まれていった。まるで我々のトラックが来るのを待っていたようだった。


 その後ジュマの運転でトラックは夜遅くまで何度もモロロとマドゴを往復した。活動を始めたのはいいが私の出した金額ではわずか一日の活動しか出来なかった。しかしいち早く動き出したミコノのトラックを見て、次の日は地元の
NGOとガソリンスタンドのオーナーからそれぞれ数十リットルの燃料をいただき、2日目、3日目とトラックを動かすことが出来た。


 その後、日本のミコノ事務局に状況を知らせるメールを送ったところ、今から募金を募るがお金が集まってからでは遅い、とりあえず立て替えたお金を送るから活動を続けるようにと、送金をいただき最終的に合計54回のトラックの往復により約1000世帯の人々の生命と財産を守る手伝いが出来た。


 現在のミコノの運営方式と経済状況では災害時の緊急支援を行うのは難しい状態だといえる。


 ユニセフ、赤十字などの大きな団体も食料や食器、蚊帳、テントなどのさまざまな援助を行ったが、人と家財道具の移動の支援を行った団体はほかにはない。他の大きな団体から比べると我々ミコノが行った援助は金額的には比べ物にならないほど小さいものではあるが、いつもガリッサにいて常に彼らのそばにいるミコノだからこそ、迅速かつ的確な援助が出来たという評価の声をいただいた。


 このたびの洪水を振り返ると、我々の事務所もいつ水が襲ってくるかわからない状況で、宿舎も豪雨のあとは敷地内も前の道も川のようになり一歩も外に出られないときもあった、しかし地元の人々からいただく「アサンテサーナ(ありがとう)」の言葉が一番うれしかった。

我々がいただいたこの言葉を日本で援助してくださった皆様にそのまま送りたい。

 アサンテサーナ。

         


                 ミコノ宿舎ゲート付近
ミコノの会/MIKONO INTERNATIONAL 本文へジャンプ



                洪水を振り返って


                                          尾崎 正道